25.05.16
企業にとって「事業継続計画(BCP)」は、予期せぬ事態が発生した際に事業を迅速に復旧させるための重要な指針です。しかし、いざという時に「いつBCPを発動すべきか」「その後どう動けば良いのか」と迷う企業も少なくありません。この記事では、BCPの発動基準、初期対応、そしてその後の復旧活動について詳しく解説します。緊急時の対応をスムーズに行うための参考にしてください。
BCPの発動とは、災害や事故などの緊急事態に直面した際、策定した計画を実際に実行に移すことです。これにより、事業への影響を最小限に抑え、速やかな復旧を目指します。
適切なBCP発動には、明確な判断基準が不可欠です。緊急時に迷うことなく行動できるよう、どのような状況でBCPを発動するのか、事前に明確な基準を設けておく必要があります。
基本的に、以下の2つの条件が揃った場合にBCPを発動するのが望ましいとされています。
・事業の生命線となる機能に支障が出た場合
・主要な事業を目標とする復旧時間内に回復させる場合
一般的な自然災害における発動条件の例としては、以下のようなものが挙げられます。
オフィスがある都道府県で大規模な地震(震度6強以上)が発生した場合
オフィス内で火災が発生した場合
オフィスが所在する都道府県に記録的な大型台風が上陸した場合
これらの条件はあくまで一般的な例であり、企業や事業の特性に応じて、震度5での発動など、より具体的な基準に変更・設定することが重要です。
BCPが発動された後の緊急対応ステップについて、ご紹介いたします。
BCP発動後、最初にすべきことは緊急対策本部の設置です。発動から24時間以内の設置を目指し、以下のような役割を持つグループで対応を進めましょう。
・緊急対策本部(全体統括)
・事務局(連絡・調整)
・情報収集チーム(被害状況把握)
・広報チーム(対外・対内情報発信)
本部の設置場所は、通常は本社ビルなどが想定されますが、そこが使用不能になった場合に備え、複数の代替場所を事前に定めておくことが重要です。
次に、二次災害の防止を最優先に被害状況の確認を行います。事業所からの安全な撤退指示、負傷者への応急手当、火災発生時の初期消火など、命と安全を守る行動が求められます。就業時間外にBCPが発動した場合は、出社可能な従業員の招集基準を設けておくことが理想的です。
確認すべき主な被害状況は以下の通りです。
中核事業を復旧できる状況か、設備や機器の異常、建物の安全性などを確認し、その後の指揮を執る場所を確保します。
社外との連絡手段、電気・ガス・水道などのライフラインの状況を確認し、災害全体の状況を俯瞰的に把握します。
自社への被害が少なくても、主要な取引先が甚大な被害を受けていれば、事業復旧が困難になる可能性があります。安否確認と状況把握に努めましょう。
被害状況を把握次第、代替手段を講じて事業の継続と復旧を図ります。具体的には、被災した建物の修理手配や、必要な経営資源(資材、部品、人員など)の確保を行います。経営資源の調達方法は、取引先や交通状況によって変動するため、状況に応じた臨機応変な対応が求められます。
初期対応がある程度進んだ段階で、従業員の帰宅時間も考慮する必要があります。今後の対応方針を従業員に明確に周知し、指示を出した上で安全に帰宅させることが大切です。
初期対応が完了した後も、継続的な復旧活動が求められます。
災害により甚大な被害を受けた従業員に対しては、企業として後方支援を行う必要があります。食料や仮住居の提供、本人や家族に死傷者が出た場合の最大限の配慮などが含まれます。同時に、活動可能な従業員には適切な指示を出し、常に情報共有を行うことで、円滑な活動体制を維持しましょう。
中核事業を復旧させるためには、顧客や取引先との連携が不可欠です。電話やメールなど、あらゆる手段で連絡を取り、お互いの被害状況を確認し、取引の調整や復元を進めます。
顧客に対し今後の事業計画を説明し、納期などに関する理解を得るための話し合いです。協力会社との連携や代替設備の活用により、可能な限り顧客のニーズに応えられる体制を整える努力が求められます。
中核事業が復旧し次第、元の取引体制に戻してもらうためのプロセスです。
緊急時において、自社の財務対策も重要です。目先の運転資金の確保に加え、事業復旧のための資金調達が必要となります。
資金獲得の一つの手段として、損害保険の請求が挙げられます。総務部門は被害状況に基づき必要な修理費用などを算出し、保険請求手続きを進めましょう。また、自治体からの支援金や緊急貸付制度を利用できる可能性もあります。状況によっては、証券など保有資産の売却も検討する必要があるかもしれません。
BCPは、中核事業に被害を受け、緊急な対応が求められる際に発動されます。発動条件は企業によって異なりますが、事前に明確な条件を設定し、全従業員に周知しておくことで、有事の際にそれぞれの担当者がどのように動けば良いか明確になります。
発動後の各フローにおいても、事前に担当者を決定し、迅速に行動に移せる準備をしておくことが大切です。これらの準備を踏まえ、組織全体で一丸となって緊急事態に対応していきましょう。