25.05.30
「サーバーとは何か」と改めて問われると、簡潔に説明するのは意外と難しいかもしれません。この記事では、サーバーの基本的な概念からその多様な形態、種類、そして企業にとって不可欠なサーバー保守の重要性まで、網羅的に解説します。
サーバーは、ひと言でいうと「情報やサービスを提供するコンピューター」です。普段利用しているパソコンと根本的な構造は似ていますが、その果たす役割は大きく異なります。
サーバーの主な働きは、クライアント(個別のコンピューターやデバイス)から送られてくる要求(リクエスト)を受け取り、それに合致する適切なデータをクライアントへ送り返すことです。あるシステムが機能するとき、多くのコンピューターがサーバーとつながり、データのやり取りを行います。つまり、サーバーとの連携がなければ、システム全体が正常に動作することはできません。このことから、サーバーは「システムの中心的な役割を担う存在」と表現されることもあります。
具体例のひとつとして、ウェブサイトを閲覧する際、使っているパソコンやスマートフォンはWebサーバーに接続しています。「このページを見たい」というリクエストをWebサーバーに送ると、Webサーバーは関連するページのデータを自身の記憶領域から探し出し、デバイスに送信します。これによって、画面にウェブページが表示されるのです。
このように、サーバーはデータを保持し提供する側ですが、データを要求して受け取る側の機器は「クライアント」と呼ばれます。上記の例でいえば、ウェブページを開こうとしているパソコンやスマートフォンがクライアントにあたります。
さらに、1台のサーバーは数多くのクライアントからの接続に対応し、大量の要求を処理しなければなりません。そのため、クライアント側のコンピューター(パソコンなど)と比較して、非常に大容量で高性能である必要があります。大量のデータを蓄積・管理することも、サーバーが担う重要な機能の一つです。
サーバーとして機能するコンピューターは、その見た目や構造によっていくつかのタイプに分けられます。ここでは代表的な3つの形状を紹介します。
デスクトップパソコンのように、縦型のケースにハードウェアが収められています。そのため、専用のサーバルームがなくても、オフィスの片隅に設置することが可能です。基本的に単独での利用を想定しており、大規模な機能拡張や他のサーバーとの連携を考慮しないモデルが多いため、主に小規模なシステムでの導入に適しています。
「サーバーラック」と呼ばれる専用の収納棚にサーバーを格納するタイプです。サーバーラックは縦長の直方体で、サーバー本体や関連部品、冷却ファンなどを効率的に配置できます。複数のサーバーを特定の場所に集約し、連携させて運用することを前提とした形状です。そのため、サーバルームやデータセンターを準備した上で、中規模から大規模なシステムを構築する際に採用されます。
ラックの各規格やサイズ表記方法が細かく定められているため、後からのパーツ選定やカスタマイズがしやすいという特徴もあります。
ラックマウント型よりもさらに多くのサーバーを密集させ、省スペースで収納する形状です。サーバーのハードウェアや部品は、ブレードと呼ばれる細長い薄いケースにまとめられます。この複数のブレードサーバーを「ブレードシャーシ」と呼ばれる本体に差し込むことで、シャーシから各ブレードに電力が供給され、サーバーとして機能する仕組みです。
多数のサーバーを用いた大規模なシステムを、限られたスペースで実現したい場合に選ばれやすいですが、統一的な規格策定はまだ発展途上にあるため、導入後のカスタマイズや異なるメーカー製品間の連携がやや難しい場合があります。また、導入コストが高くなる傾向にあります。
物理的、仮想的を問わず、サーバーにはそれぞれの用途に特化した様々な種類が存在します。特定の機能は、複数の種類のサーバーが連携することで実現されていることも少なくありません。
HTMLファイル、CSSファイル(ページのレイアウトやデザインを調整する)、動画・画像ファイルなど、ウェブページを構成するデータを記録しているサーバーです。クライアント(一般的なパソコンやスマートフォンなど)からの要求に応じてデータを送信することで、クライアント側での該当ウェブページの表示を可能にします。
電子メールの送受信を管理し、各端末でのやり取りを可能にするサーバーです。メールの送信は「SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)サーバー」、受信は「IMAP(Internet Message Access Protocol)サーバー」または「POP(Post Office Protocol)サーバー」によって制御され、これらが組み合わさることでメール機能が成り立っています。
例えば、メールを閲覧する際には、IMAPまたはPOPサーバー内に保存されている自分のメールボックスから該当のメールデータが端末にダウンロードされ、内容が表示されます。POPサーバーではダウンロード完了後にメールデータがサーバーから削除されますが、IMAPサーバーではサーバーに保管され続けます。
「データベース」とは、多くの情報を属性ごとに分類し、構造化して集めたものです。これを電子データやその保存・管理システムとして具体的に実現し、操作可能なシステムとして構築しているのがデータベースサーバーです。
クライアントは、SQLなどのプログラミング言語を用いてデータベースサーバーに要求を出すことで、必要なデータの検索、新規データの書き込み、既存データの削除などを行えます。他のサーバーと連携することも多く、例えばWebサーバーと組み合わせることで、「クライアントが入力した検索条件に合う商品情報をウェブページに表示する」といった機能が実現されます。
特定の端末に保存されているデータと、他の端末にあるデータとのやり取りを仲介するサーバーです。サーバー自体にデータを保管することよりも、「各端末間でのデータの効率的な移行を制御する役割」に重点が置かれています。例えば、チームでファイルを共同作業する際、各メンバーが自分の端末で編集しながらも、適切にファイルを共有できる環境が必要です。こうした作業環境を提供しているのがファイルサーバーです。さらに、やり取りされるファイルをバックアップとして保管する機能も担います。
アプリケーションサーバーは、Webサーバーが直接扱わない、動的な処理を行うサーバーです。例えば、JavaやPHP、Rubyなどのプログラミング言語で書かれたプログラムを実行する役割を担います。Webサーバーを通じてクライアントからのリクエストを受け取ると、それに基づいてデータ処理を行い、その結果をWebサーバーに返送します。ウェブサイトに設置されている問い合わせフォームやリアルタイムチャット機能などは、このアプリケーションサーバーによって実現されています。
さらに、アプリケーションサーバーは、処理に必要なデータをデータベースサーバーに問い合わせることも頻繁にあります。Webサーバーやデータベースサーバーとの連携により、複雑なアプリケーションを開発するための基盤となることも重要な役割です。近年では、より効率的にアプリケーションを開発できる環境を提供することに特化したアプリケーションサーバーも登場しています。
「File Transfer Protocol(ファイル転送プロトコル)サーバー」は、クライアント側とWebサーバーとの間で行われるファイルの送受信を制御します。FTPサーバーを介することで、クライアント側からもWebサーバーへファイルをアップロードすることが可能になります。例えば、自社サイトを作成する際には、HTMLやCSSのデータ、様々な素材データをWebサーバーに送る必要がありますが、これらの送信を可能にしているのがこのFTPサーバーです。
「Domain Name System(ドメイン名システム)サーバー」は、インターネット上での通信に不可欠なサーバーです。ウェブページの所在地を示す数値データである「IPアドレス」を、人間が理解しやすいURLの主要部分である「ドメイン名」に変換したり、IPアドレスとドメイン名を相互に対応させたりする機能を担っています。IPアドレスを直接記憶したり入力したりすることは人間には困難なため、このDNSサーバーによって紐づけられたドメイン名を使ってウェブページにアクセスしています。
自社環境で物理サーバーを運用する場合、サーバーの保守は非常に重要な業務となります。
具体的には、「何らかのトラブル発生を想定し、その際にもサーバーができる限り通常通り機能するように準備しておくこと」や「トラブル発生時に迅速に復旧作業を行うこと」が保守と呼ばれます。「運用管理」という言葉と混同されることもありますが、厳密には、サーバーが日常的に安定して稼働し続けられるように、点検やアップデートなどを管理することが運用管理です。これに対し、「保守」という場合は、トラブルへの対応を主軸とした業務を指します。
こうした保守業務、特に物理サーバーの不具合対応については、サーバー購入時にメーカーの保守サービスに加入することで、メーカーからのサポートを受けるのが一般的です。また、メーカー側でのサポート期間が終了したサーバーを現在も自社で使用している場合は、第三者保守業者を利用することも重要な選択肢として検討できます。
物理サーバーを構成するハードウェアの部品には、すべて寿命があります。保守作業を行わなければ、部品は徐々に老朽化し、ある日突然寿命を迎えてサーバー全体が停止してしまう事態も考えられます。このような事態に備え、日々のメンテナンスが不可欠です。
サーバーが故障し、自社サービスを顧客に提供できなくなったり、顧客からのアクセスを受け入れられなくなったり、あるいは情報漏洩のリスクが増大したりすれば、企業の社会的信用は大きく低下するでしょう。金銭的な意味で甚大な損失を招く危険性も十分にあります。そうしたリスクを最小限に抑えるためには、万が一トラブルが発生した場合でも、冷静かつ迅速に復旧作業を進められる高い能力を持った保守チームを組織しておく必要があります。
自社で物理サーバーを管理する場合、ハードウェアに関する専門知識と技術を持つ担当者が必要です。しかし、24時間稼働しているサーバーの保守を自社のみで行うには、継続的なコストと人員の投入が求められます。また、専任のスタッフを置くと、その業務が特定の人に集中し、担当者以外では対応が難しい「属人化」のリスクも発生しがちです。
こうした課題に対し、いくつかの解決策が考えられます。一つは、サーバー購入時にメーカーが提供する保守サービスを利用する方法です。メーカーのエンジニアが対応するため、自社に専門知識がなくても安心して運用できます。ただし、メーカー保守には期間が設定されているため、期間終了後はサポートを受けられなくなる可能性がある点に注意が必要です。
メーカー保守の期間が過ぎた場合や、社内での保守対応が難しい場合は、第三者保守サービスの利用も有効な選択肢となります。これは、メーカーやベンダーとは異なる専門業者が保守を行うサービスで、メーカーサポート終了後もトラブル時に迅速な対応が期待できます。
サーバーとは、ネットワークを介して特定のサービスを提供するコンピューターのことです。利用形態によって、物理的なサーバーと仮想的なサーバーの大きく2種類に分けられます。また、様々な機能に特化したサーバーが組み合わさることで、普段使っているインターネット上の多様なサービスが成り立っています。基本的な働きは、クライアントからのリクエストに応じて、サーバー内部のデータの中から該当する情報を見つけ出し、クライアントに送り返すことです。
ITシステムを活用してサービスを展開する企業にとって、自社サーバーの運用・保守は欠かせません。通常、機器購入時にメーカーの保守サービスを利用しますが、これには期間制限があり、期限を過ぎるとサポートを受けられなくなる可能性があります。自社で保守を行う選択肢もありますが、これには大きな負担や課題が伴うことも事実です。このような保守に関する課題を解決する手段として、第三者保守の活用を検討してみてはいかがでしょうか。