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  • 災害時も事業を止めない!緊急時の電源確保と
    安定した電力供給を維持するBCPの考え方とは

    はじめに

    災害による停電は、企業の事業継続に甚大な影響を及ぼします。そのため、非常時の電源確保は事業継続計画(BCP)において極めて重要な要素です。

    本記事では、災害発生時に電源を確保する具体的な方法、電源設備に関するBCP対策、およびその策定プロセスについて詳しく解説します。関連製品の一括資料請求も可能ですので、ぜひご活用ください。

    災害時に電力を確保する方法

    災害時には停電が頻繁に発生するため、電源の確保が不可欠です。蓄電池や非常用発電機などを事前に準備することで、停電時でも電力を使用できる体制を整えましょう。

    蓄電池の活用

    蓄電池は、電気を貯蔵し、必要な時に供給する装置です。災害発生時には停電の影響を最小限に抑え、照明や通信機器など、必要最低限の電力供給を可能にします。太陽光パネルと組み合わせることで、停電が長期化した場合でも再生可能エネルギーによる電力補充が可能となり、その利便性はさらに高まります。

    家庭用と産業用があり、特に東日本大震災以降、産業用蓄電池の有用性が注目されています。産業用蓄電池は、その素材によって主に4種類に分類されます。それぞれの特性を理解し、用途に応じた選択が重要です。

    鉛蓄電池

    歴史が長く、比較的安価で信頼性が高いのが特徴です。ただし、重量があり、寿命が比較的短いという側面があります。

    リチウムイオン電池

    軽量で高エネルギー密度を誇り、長寿命であることから、現在広く普及しています。一方で、初期費用が高めである点が課題です。

    ニッケル水素電池

    安全性に優れ、環境負荷が低いですが、リチウムイオン電池と比較してエネルギー密度は劣ります。

    全固体電池

    次世代の蓄電池として期待されており、高い安全性と効率性を持っています。現状ではコストが高く、さらなる技術革新が求められています。

    非常用発電機の利用

    非常用発電機は、停電時に燃料を用いて電力を供給する装置です。用途や規模に応じて多様な種類が存在し、一般家庭から大規模施設まで対応可能です。災害時の電力確保に非常に有効な手段といえます。導入に際しては、燃料の種類や出力による特性を把握することが重要です。

    <燃料別の種類>

    ガソリン

    小型で持ち運びやすく、家庭用やアウトドアでの利用に適しています。初期費用が抑えられ、メンテナンスも比較的容易ですが、燃料の保管期間が短く、長時間の連続運転には不向きです。

    ディーゼル

    高出力で耐久性に優れ、大型施設や業務用に適しています。燃料費が安く、連続運転が可能というメリットがある一方で、初期費用が高く、騒音や振動が大きいというデメリットもあります。

    ガス

    都市ガスやプロパンガスを使用し、排気ガスがクリーンで燃料の長期保存が可能です。ただし、設置場所に制約がある場合があり、初期導入に手間がかかることがあります。

    <出力別の種類>

    小型の発電機(1~5kW)

    家庭用に適しており、照明やスマートフォンの充電など、最低限の電力供給が可能です。

    中型の発電機(5~20kW)

    中小企業や商業施設での利用が想定され、冷蔵庫や給水ポンプなどの中規模な設備を稼働させるのに十分な出力を持っています。

    大型の発電機(20kW以上)

    病院や工場、避難所などの大規模施設で使用され、多くの機器を同時に稼働させることができます。

    電源設備に関するBCP対策

    災害時にも万全な電源設備を整えるためには、どうすればよいでしょうか。企業の内外それぞれの要因に着目し、2つの対策をご紹介します。

    外部要因対策:受電設備の多重化

    災害時に電力供給が途絶える原因の一つに、送電回線のトラブルがあります。そこで、受電方法を工夫することで、停電リスクを低減できる可能性が高まります。具体的には、以下の2つの方法が推奨されます。

    本線予備線受電

    2つの送電回線を用意し、一方が故障した場合にもう一方の回線に切り替える方法です。予備回線で受電を継続できるため、停電を回避できます。

    ループ受電

    複数の需要家と回線を接続して環状構造を形成し、2方向から受電する方法です。2つの回線を利用する点は本線予備線受電と同じですが、本線予備線受電が片方を予備として待機させるのに対し、ループ受電は両方向から常に受電する点が異なります。

    この他にも、3つ以上の回線を用意する方法や、複数の電力会社から受電する方法も考えられます。いずれも単一回線受電と比較してコストは増加しますが、その分、より強固な電力供給体制が実現します。大規模施設や重要度の高い施設ではこれらの対策を取り入れ、停電のリスクを最小限に抑えることが望ましいです。

    内部要因対策:受変電設備等の二重化

    施設への安定的な電力供給には、外部の電力回線対策だけでなく、施設内の設備対策も不可欠です。特に、受変電設備の二重化は有効な対策の一つです。

    受変電設備とは、受電した電力を低圧に変換し、施設内の各電子機器に供給する装置です。一般家庭では最初から低圧の電力を使用しますが、大規模施設では電気料金を抑えるために高圧で受電し、受変電設備を介して低圧に変換します。そのため、受変電設備が故障すると、施設内で適切な電圧の電力を使用できなくなります。

    その他にも、施設内の電力供給には幹線ルートや電灯盤、動力盤などが関わっています。これらの故障やメンテナンスによる停電を避けるためにも、設備の二重化を実施しましょう。

    電源確保に向けたBCPの策定方法

    電源確保に向けたBCPの策定は、災害時や緊急時に企業の事業活動を維持するために不可欠です。以下に、自社独自での策定方法と、国際規格「ISO22301」の取得を活用した方法を説明します。

    自社でBCPを策定する

    BCPの策定方法として最も一般的なのは、自社で独自に計画を立てる方法です。多くの企業は、自社の業務特性に合わせたBCPを試行錯誤しながら策定しています。

    ただし、ゼロから計画を立てるのは困難な場合が多いでしょう。専門書籍や政府が公開しているガイドライン、テンプレートなどを参考に策定を進めることが有効です。自社での策定が難しい場合は、専門のコンサルタントに協力を依頼するのも良い選択肢です。これにより、完成度の高い、自社に適したBCPを実現できる可能性が高まります。

    どの方法を選んだとしても、最初から完璧なBCPを策定することは難しいものです。多くの企業が、訓練や見直しを通じて問題点を発見し、日々BCPを改善しています。BCP策定は長期的に取り組むべき課題であると認識することが重要です。

    国際規格「ISO22301」を取得する

    ISO22301は、事業継続マネジメントシステム(BCMS)の国際規格です。地震や洪水などの自然災害に加え、感染症のパンデミックや大規模停電など、さまざまな脅威を対象としています。BCP策定に活用できるだけでなく、ISO22301を取得できれば、その企業が考えうる脅威に対して適切に備えていることを対外的に証明できます。

    取得には手間や費用がかかりますが、自社のBCPへの取り組み姿勢を取引先や協力企業、顧客にアピールできるのは大きなメリットといえるでしょう。かつては英国国家規格のBS25999や、情報システムに特化した規格であるISO27001が利用されていましたが、2012年にISO22301が発行されて以来、BCPの質の高さをアピールする材料として広く用いられるようになっています。

    ISO22301を取得するには、以下の3つの要素を満たす必要があります。

    ・事業継続を脅かす事象に対する組織的な対応の構築・運用
    ・BCPのパフォーマンスと有効性の評価
    ・継続的な改善活動

    BCPの策定には、災害時の迅速な対応や情報共有を支援するBCP対策システムの活用が有効です。これにより、効率的かつ正確な計画運用が実現します。おすすめのBCP対策システムについては、以下の記事もぜひ参考にしてください。

    実践のためのポイント

    本記事で解説した具体的な方法や対策は、重要な手段となります。しかし、単に設備を導入したり、計画書を作成したりするだけでは、まだ充分とは言えません。
    BCPをより効果的なものにするための考え方と、その実践におけるポイントを紹介します。

    事業への影響度を明確にする「電力アセスメント」

    BCPにおいて最初に行うべきは、自社の事業活動における電力への依存度を正確に把握することです。単に「電気が止まったら困る」ではなく、

    ・どの部門、どの業務が、どのような電力を、どのくらい必要とするのか?
    ・電力が供給停止した場合、各業務にどのような影響(停止、遅延など)が出るのか?
    ・その影響がどれくらいの期間でどれくらいの損害(金銭的、信用的など)につながるのか?
    ・最低限の事業継続に必要な電力は何か?(優先順位付け)

    といった具体的な「電力アセスメント」を行うことが重要です。これにより、漠然とした不安から具体的な対策へとステップアップし、限られたリソースを最も効果的な部分に投下できるようになります。例えば、全社停電時でもサーバーだけは稼働させたいのか、あるいは照明と通信さえ確保できれば一時的な業務停止は許容できるのか、といった判断基準を明確にします。

    多層的な「電力レジリエンス」の構築

    本記事で述べたように、電源確保には蓄電池、非常用発電機、そして受電設備の多重化や受変電設備の二重化など、様々なアプローチがあります。これらを単独で導入するのではなく、複数を組み合わせることで、より強固で回復力のある「電力レジリエンス(回復力)」を構築する視点が重要です。

    例えば、短時間の瞬断にはUPS(無停電電源装置)で対応し、数時間の停電には蓄電池、長期の停電には非常用発電機と燃料備蓄で対応するといった、多段階の対策を講じることが考えられます。また、外部からの受電が完全に途絶えた場合でも、太陽光発電と蓄電池を組み合わせた自立型電源システムを導入することで、外部環境に左右されない電力供給源を確保することも、特に重要度の高い施設では検討に値します。

    「運用」と「継続的改善」を組み込んだBCPサイクル

    BCPは策定して終わりではなく、常に運用し、改善していく「サイクル」として捉えるべきです。特に電源に関しては、設備の経年劣化や燃料の管理、システムの更新など、定期的なチェックとメンテナンスが不可欠です。

    定期的な点検と試運転

    非常用発電機は定期的に試運転を行い、実際に稼働するか、燃料は十分かを確認します。蓄電池も充電状況や劣化度合いをチェックします。

    訓練の実施

    停電を想定した模擬訓練を行い、担当者がスムーズに電源を切り替えられるか、緊急時マニュアルが機能するかを検証します。

    見直しと更新

    訓練で発見された課題や、電力使用量の変化、技術の進歩に合わせて、BCPの内容や設備投資計画を定期的に見直します。

    これらの活動を通じて、BCPが常に実態に即した、生きた計画として機能するようになります。

    まとめ

    災害時の電源確保とBCPの策定は、企業の事業活動を維持するために不可欠です。蓄電池や非常用発電機の準備、受電設備や受変電設備の多重化などにより、停電リスクを軽減できます。また、自社独自の策定に加え、国際規格「ISO22301」の取得を通じて信頼性を高めることも可能です。

    災害は予測不能ですが、適切な電源確保とBCPの考え方を導入し、継続的に改善することで、企業はどのような状況下でも事業を継続できる、強靭な体質を築くことができるでしょう。


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