25.11.28
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オフィスへの入退室に必須の社員カード(IDカード)。「持っているだけ」でアクセスできる便利なツールですが、実はそこには「住居の鍵」のような大きなリスクが潜んでいます。
物理的なセキュリティ対策において、この社員カードがスキミング(情報の不正読み取り)や複製によって悪用され、不正アクセスを許してしまうことは、システム全体の安全性を揺るがしかねません。物理的アクセスコントロールシステム(PACS)の安全を守るために、企業が今すぐ取り組むべき社員カード保護と対策の最前線をご紹介します。
社員カードは、パスワードの使い回しといったデジタルなリスクを軽減する利点がある一方で、「物理的なトークンを所持している=アクセス許可」というシンプルな構造に脆弱性があります。
特に磁気ストライプなどの単純な認証方式は、リーダーに接触した一瞬で情報が複製されてしまう恐れがあります。また、悪意のある人物がカードリーダー自体に不正なデバイスを仕掛けたり、物理ポートにアクセスしたりすることで、データの窃取やシステムの破壊を招く可能性も否定できません。
スキミングや偽造を根本から防ぐためには、カードの認証技術そのものを高度化することが不可欠です。
従来の磁気カードから、より高度なセキュリティを持つスマートカード(ICカード)への移行が推奨されます。ICカードは、内部に組み込まれたチップで認証情報が暗号化されており、不正な読み取りが極めて困難です。
さらに、PIV(個人識別検証)カードなどの高度な認証情報を採用することで、秘密鍵を耐タンパー性の高いストレージで保護します。これにより、重要な認証プロセスや計算をシステムの他の部分から隔離して実行できるため、カードの安全性が格段に向上します。
最も効果的な対策の一つが、多要素認証(MFA)の導入です。「カード単体による承認」という弱点を克服するため、2つ以上の要素を組み合わせます。
カードの読み取りに加え、本人だけが知る暗証番号(PIN)を要求することで、万が一カードが盗難・スキミングされても不正利用を防ぎます。
指紋や虹彩などの生体特性(本人の身体的特徴)を組み合わせることで、カードの貸し借りや盗難による不正な物理的侵入を極めて強固に防ぎます。
社員カードだけでなく、カードリーダーやアクセスポイント自体のセキュリティも重要です。
防犯カメラやセンサーによる電子監視を行い、誰が、いつ、どこでアクセスを試みたかをすべて記録します。不正なアクセス試行を検知した際には、即座にアラームを作動させる仕組みも有効です。
機器を収容するキャビネットを施錠し、配線を露出させないよう厳重に管理することで、悪意ある人物による不正なデバイスの取り付けや直接的な操作を未然に防止します。
厳格なセキュリティを導入する際に見落とされがちなのが、緊急時の対応です。
火災やガス漏れなどの緊急事態が発生した場合、オペレーターや担当者がHMI(ヒューマンマシンインターフェース)などの重要機器へ即座にアクセスできることが、人命救助や安全確保において最優先されます。
スキミング対策として高度な認証を導入する際も、認証手続きが救命活動の妨げにならないよう、例外的な緊急アクセス手順を設計することが求められます。
社員カードによるセキュリティ対策は、自宅の「鍵」に例えることができます。
単純な磁気カードは、誰でも簡単に複製できる「合鍵」のようなものです。これだけでは不安ですが、そこに暗証番号や指紋認証といった「二重の鍵」をかけることで、たとえ鍵そのものがコピー(スキミング)されたとしても、泥棒の侵入を許さない、強固な防御壁を築き上げることができるのです。
デジタルと物理、両面からの徹底した対策こそが、あなたの組織の安全を最終的に守ります。
社員カードの対策を「点の防御」とするならば、データセンターへのデータ集約は「面の防御」です。守るべき核心的な資産を、物理的強靭さに優れたデータセンターという基盤へ移すことこそが、多角的な視点から組織を最終的に守るための最も賢明な選択となります。